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森 博達

日本書紀の謎を解く―述作者は誰か

日本書紀の謎を解く―述作者は誰か

人気ランキング : 6379位
定価 : ¥ 819
販売元 : 中央公論新社
発売日 : 1999-10

価格 商品名
¥ 819 日本書紀の謎を解く―述作者は誰か
文句なく面白い一冊!「森」深くへ引き込まれますよ。

タイトルが正直いまいち。これじゃ、凡百の書紀入門書みたいで手にとってもらえないのでは?書紀の作者に興味のある人間なんてそういないし、この本は作者もそうだけど、むしろ著者がその結論に至る分析過程や切り口にこそ醍醐味がある。導入部にこれからの論証を森の探索に例えての口上があるのだが、正直芝居がかってて「なんだか大袈裟だな」といやだったのですが、本論に入ってからは、著者の着想の面白さと、分析の手さばきの鮮やかさにどんどん「森」の奥深くへひきこまれていきました。ネタバレはさけますが、例えるなら、上質の推理小説といっていいでしょう。久しぶりに中公新書でワクワクしました。文句なく、面白く、独創的な一冊です。

日本書紀の漢文表記を詳細に分析、編纂の謎に迫る

聖書では旧約がヘブライ原典の用語法の分析により主にエローヒム資料とヤハウィスト資料より成立することが解明されたり、新約での四福音書・使徒行録、書簡等の文書相互の関係や述作者の特定が進んでいる。本書は本邦の日本書紀の成立をその漢文表記を精緻に分析し、渡来人によるα群とそれを書き継いだ倭人によるβ群による合作だと結論づける。記紀が編纂された頃の日本語は、現代よりも母音や子音が豊富で、それに合わせて主に固有名詞の表記で漢字が明確に使い分けられた。また漢字音も倭人や朝鮮半島の渡来人が使用していたものや、中国人が直接持ち込んだものが混在していた(漢音・呉音等)。だから渡来中国人が書く文章と、中国語に不慣れな倭人の漢文が自ずから異なったものになるのは当然である(漢文に倭人に特徴的な誤用・変用が現れる)。著者は、日本書紀を森にたとえて、先住の倭人と渡来人の共同作業のあらましにひとつの結論を与えている。

古代史改竄を見破る文献学

 日本の古代史研究の従来の欠陥は、資料の前提となるべき文献学的研究があまりに貧弱だったことである。その貧困さが、記紀に書かれる以前の史実をどう推定するのかという時に、古代史研究者を迷路へ誘い込んでいた。
 『古事記』と『日本書紀』がいずれも、史実に曲筆を加えていることは、誰にとってもほとんど直観的に明らかであり、『古事記』序文のように嘘臭い文を読んで、歴史の改竄を感じないとしたら、よほど感性が鈍いということであろう。だが、実際にどの部分が歪曲されているかは、客観的な手懸りが供給されていなかった。客観的手懸りを提供すべき文献学があまりに貧困だったからだ。
 森博達氏の『日本書紀の謎を解く』は、そんな混迷に終止符を打つ第一歩となる。『日本書紀』の個々?!??!!部分が、中国人執筆者による初期執筆の巻(α群)と日本人執筆者が曲筆を振るった巻(β群)に別れることを漢字音から機械的に方法論的に導く途を見出したのである。そればかりか、中国人執筆者が書いた原文の個々の箇所について、日本人加筆者が改竄の筆を振るったかどうかが、かなりの確度でもって判明する。中国人執筆者は、記紀以前の文献を見て最初の造文を行なったろうから、この部分はそれなりに記紀以前の古形を伝えるものと見なせる。
 記紀以前の文献の姿が明らかになったとしても、それがそのまま史実という訳ではないが、少なくとも記紀段階で加えられた改竄以前の姿が判ることは大きな進歩といえる。その方法論と記紀研究に及ぼす意味を一般向けに書いたのが『日本書紀の謎を解く』であり、今後?!??!!アマチュアのトンデモ歴史本の出番はなくなるであろう。同時に、歴史学界の大先生の恣意的史論も権威を失墜することになる。古代史に関心あるすべての人に読んで貰いたい現在の至宝の書である。

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