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山本 夏彦

誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答

誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答

人気ランキング : 31242位
定価 : ¥ 725
販売元 : 文藝春秋
発売日 : 1999-10

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¥ 725 誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答
コラムよりも言葉がつくされている

今は亡き夏彦氏といえば辛口コラムである。
ただ本人も書いていたようにコラムは言葉を削りすぎてよくわからない場合すらあった。

本書はインタビュー形式でかねてから力説されていた、
戦前は断じて暗黒時代ではなかった、
ということについて、夏彦氏にしては珍しく多くの言葉で語られている。

インタビュアーの方は「室内」の工作社の社員で現代若者の代表という位置づけのようだが、
決して平均的な若者ではなく、むしろかなりの才媛であり、
夏彦翁を向こうにまわして丁々発止とは行かないが、機転の利いた受けがみられる。

戦前というテーマは硬いのだが、中身は民俗的なことであり、
上記のようなやりとりもあることから楽しんで読むことができた。
写真コラムの後に読まれると良いかと思う。

スパイシー山本

戦前暗黒史観を是正するのが目的なのだが、科学と哲学の分離
という現代にとって深刻な問題をあっさりと言ってみたり、
本質的発言が多かった。
雑談形式ということもあり、脱線に次ぐ脱線。
これもまたおもしろいのだが。。。また辛口。
かなりスパイシー。例えば、
戦前も戦後も大衆はイナゴの大群同様、欲してもいない女に参政権は
不要(責任ある壮年がもつべき)、見巧者の不在で映画は滅びた、
現代小説は死んだ、原水爆禁止などは世迷い言など言いたい放題。
しかし納得。
で、著者は大正生まれが原因なのか、昨今の若者の漢字知らずを
浮き彫りにしたいのか(笑)、なかなか意味の捉えにくい漢字が
多かった。例えば陋巷、鼓腹撃壌、嫋々たる、独参湯、粗略、
童蒙、束脩、偉丈夫などである。久々に辞書を何回も引くことに
なり、勉強になった(笑)。
戦後日教組的教育を受けてきた方であろうが、そうでなかろうが
リアルな戦前を知るにはよい本だと思う。

変化もまた連続した歴史の中の出来事

渡部昇一が「大正期には軍人は小さくなっていた」と書いているのを読んで、「戦前」がすべて真っ暗だった訳ではないということを、私ははじめて知った。以来、戦前が本当はどういう時代だったのか、ということが気になっているが、どういう文献にあたればいいのか判らないこともあって、気にはなっても知識は増えない。先般も大阪圭吉を読んで戦前の裁判の意外なまともさに驚いたような始末である。
本書を手にとったのはむろんそういう知識を欲してのことで、その点では正直いってやや期待はずれだった。本当に問答を紙に落としたものなので脱線や繰り返しが多く、著者一流の断定も根拠があるのかないのか。資料的に参考にするには不向きな一冊ではあった。
かといって、読んだのは時間の無駄だったかというとそうではない。長い人生を生きてきた一人の証人の、あちらに飛びこちらに脱線する語りに付き合っているうちに、時代はやはり繋がっているということが判ってきた。変わらないものも変わるものもすべて連続した歴史の中の出来事なのだ。明治からカレーがあるように、核家族が大正デモクラシーのうちにあるように、戦後にあるものはテレビを除いて戦前にもあったかも知れない。これはこれで、戦争と言う特殊な状況下での諸々を戦前の常態とみることの愚かしさを教えられて有益ではある。だがそれだけではない。戦前に既に変わってしまっていたものや、戦後しばらくして変わったものもあるのだ。漢文の素養は広瀬武夫や夏目漱石までで以後は失われた。一方で電話が普及したのは昭和三十年代に入ってからだ。
そもそも我々は、戦前と戦後ですべてのことがいっせいに変わったと思い込み過ぎていたのではないか?時代で区切ることの危うさを痛感するとともに、バブル崩壊後の日本の変化を明治維新や敗戦と同列に論じることが、決して大袈裟ではないということも改めて認識させられたことである。

「戦前」を知らないということの意味

人生は細部から成る、とのコンセプトで、著者が若い雑誌編集者を相手に戦中戦前の誰も書かない些事を語る。
戦前は金持ちがいた。中位がいた、貧乏人がいた、乞食がいた。
フェロモンあふれる牛屋の姐さんがいた。
候文は書き手と読み手の間に一定の距離があり、恋文さえ他人が読むに値した。
文語文には千年の歴史があり洗練されているが、口語文はようやく百年でまだ洗練されていない。
西洋の古典を自分のものにすれば西洋人になれると思って以来、日本人は尊敬されなくなった。
氏の話しは知らないことばかりでおもしろく読めたが、同時に恥かしながら理解出来ないことも多い。
「戦前」を知らない自分が愚かしく思えてならない。

戦前と戦後の断絶を埋める良書

面白かった!できれば生きているうちに出会いたかったですね・・・。
戦後に急膨張した左翼勢力が「戦前は暗黒であった」と日本人を洗脳してしまったのですが、山本翁は軽妙洒脱にこれを笑い飛ばします。
私はこの本で『大正デモクラシー』に対しての認識がガラリと変わりました。
今あるもののほとんどは戦前すでに存在した。
明治維新以後、近代化をひた走った日本が取りこぼしてしまったものとは何か。
また相方の女性社員も絶妙。是非読んでください。
なお、この企画の続編に『百年分を一時間で』があります。こちらも読みたいですね。

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