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定価 : ¥ 1,995
販売元 : 平凡社
発売日 : 2005-09 |
冒頭で、強引な通商交渉の為に来日していたペリー(ハリスだったかもしれません)が艦上から美しい風景を眺めながら、来日数日にして煩悶に陥ります。目の前で消え去つて行かうとしてゐる美しい文明。ここに西欧を持ち込むことに義はあるのか。
明治維新前後、多くの西洋人が日本に滞在し、様々な文章を残してゐます。其れを縦横に読み解くことによって、当時の日本の姿を浮き彫りにしてゐくと、今の日本とは連続性の無い一つの文明が現れます。
詳細に言及すれば、著者の誤りや偏見、贔屓があるとは思います。然し乍ら、ある文明が確かに其処にあり、今の価値観とは異なった幸せと美しさがあり、惜しまれるべきものを持っていたという著者の主張は正しいと言わざるを得ません。
もう帰って来ない「逝きし世」。当時の幸せと喜び、特に子供達の平明さを誇りに思います。幸あれ。
この先、折に触れ何度も読み返す事に成ると思ひます。
著者も述べている通り、異邦人達が好意の色眼鏡を通して見た日本であっても、彼らが強く魅かれた、もしくは自国の文化コードと著しく差異を認めた点こそ、日本の当時の文化を考察する上で重要なポイントだろう、という事なのだが、それが「人々の充足した生活ぶり」だったようだ。
前工業化時代、贅沢品はないけれど、だから日用品を芸術といえる域まで高めていった職人達、山のてっぺんから海まで耕作された田畑、長い唄の合間になされる力仕事、支配者階級(将軍ですら!)非常に質素な着物を着ているくせに、その色柄の趣味が非常に洗練されていた事実。
長らく戦争のない時代であり、工業的な進歩がなかったからこそ、その時代の人々は現代にあるようなストレスや不安から完全に開放されていたように思える。
人口も一定だったから、食物に困るような不安もなく、貧乏ではあるけれど不安もない、これは精神的には非常に楽な生き方だったんだろうなあ。
今の日本が、いや世界の方向性が間違っているとは言いたくないが、しかし本当にこの方向でいいのだろうか、と考えてしまう自分が、当時日本にいた様々な使節団の外国人達と被ってしまうところに何ともいえない感じを受ける。
外人の目を通し、時間軸も越えて自国を見る体験がこんなに面白いんだなあと思える一冊。
喪ったものばかりクローズアップされますが、現代に生きているかつての日本(それを著者は寄木細工に喩えて、ピースは同じでも組みあがっている文明は違うんだ、と言っていますが)を身近に感じられるからこそ、この時間旅行を非常に魅力的にしているとも思えます。
この本は明治以降の近代化以前の日本社会を、幕末から明治初期にかけて日本を訪れた西洋人の観察記録=文化人類学の検討を通じて、日本社会像に深刻な修正を迫る本となっています。
江戸文明とか徳川文明という日本の伝統的生活様式を生き生きと描いています。「素朴で絵のように美しい国」(上高地など近代登山の開拓者ウェストン)「かつて人の手によって乱されたことにない天外の美」「この小さな社会の、一見してわかる人づき合いのよさと幸せな様子」(明治期の英国商人クロウ)「古い日本は妖精の棲む小さくてかわいらしい不思議の国であった」(『日本事物誌』を書いたチェンバレン)「地上で天国あるいは極楽に最も近づいている国だ」「その景色は妖精のように優美で、その美術は絶妙であり、その神のように優しい性質はさらに美しく、その魅力的な態度、その礼儀正しさは、謙譲ではあるが卑屈に堕することがなく、精巧であるが飾ることもない」(英国の詩人アーノルド)と彼らは記した。阿片の持ち込まれた清代末期の中国のように貧困で退廃した世界を見た彼らは、日本が「男も女も子どもも、みんな幸せそうで満足そうに見える」(オズボーン)「個人が共同体のために犠牲になる日本で、各人が全く幸福で満足していることは、驚くべき事実である」(オリファント)。
こうした描写の日本社会が、苛斂誅求の厳しいとされていた江戸時代の社会像を、日本の歴史像を再構成することを迫っているように私には思えます。
まず、本書が思い入れたっぷりな懐古趣味や、実現方法の
裏づけのない単なる復古趣味に陥ってない点は十分強調して
おかねばならない。
何度も著者が断っているように、きちんと現在を語ろうと思
えば、そこへ至る過程で連なってきた事や捨て去り、滅び去
ったことどもを、冷静に見据えましょうということだ。
但し、原因→結果というイメージではなく、もっと微視的
で脆い感じだ。それを著者は「文化」と表現する。
本書の衝撃はフロイスを初めて読んだときのものとは少し異なる。
著者もやはり外国人の目をかりてはいる。しかし、異なるの
は、現在とは共約不可能な文化がかつて存在し、そしてそれ
はもはや滅び去ったアトランティスなのだという強い確信だ。
日本人自身による内的な「異文化」体験といういささか屈折
した立位置に著者の視線はあるわけで、それがこの著作から
ある種のストイックな風合いを感じる理由になっているよう
に思える。
多少のブレや変遷はあれ、過去から現在へと連綿と同様の文
化が続いている、と思っている方にはぜひ一読を薦める。
厚めの本であるが、平易かつ美しい文章であり、中・高校
生に是非読んでほしい一冊である。
「石原都知事絶賛!」という紹介の仕方は、杞憂かもしれな
いが、妙な先入観を与えるので本書にとっては必ずしも良い
とは思わないです。
著者がこの本を書くために調査し、読み込んだ外国語を含む参考文献の多さに圧倒されました。もちろん一書をものにするにはそれだけではダメなわけで、著者にしっかりした思想のバックボーンがなければならないが、随所にそれが見受けられます。
江戸末期から明治初期にかけての日本と日本人について(著者はそれを文明と言っている)、当時来日した西洋人の観察記を通して記述したものです。当時の日本人のものの考え方からはじまって、景観あり、男女混浴あり、馬や犬に至るまで膨大な文明観となっています。この本の帯に「読書人垂涎の名著」とありますが、その通りの本です。